【情報提供】16歳の少女はなぜ餓死したのか 「人質司法」が奪った命
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兵庫県の16歳少女死亡事件に関する記者会見(文字起こし)について
2026年10月15日
一般社団法人 日本自閉症協会
広報部
2026年6月17日に開催された兵庫県弁護士会館における、弁護士およびお母様による記者会見の文字起こしを掲載いたします。
2025年、兵庫県において、支援者で16歳の少女が、逮捕され、長期間の勾留と厳しい取調べを経て、釈放後に衰弱死するという痛ましい事件が起きました。
今回の悲劇は、警察・検察による杜撰で不適切な逮捕・勾留・取調べ・留置場内の処遇と、「人質司法」の弊害によって、引き起こされたものですが、誤認逮捕の背景には、警察・検察の障害に対する無知・無理解がありました。
本件事件は、障害福祉の現場で起きました。なぜ、本件のような悲劇が障害福祉の現場で起きてしまったのか、それを明らかにするために、訴訟を起こしたと少女の母親は語っています。
代理人弁護士は、今回の訴訟によって明らかにしたいことの一つとして、次のように述べています。
2度とこのような悲劇が繰り返させないよう、人質司法、特に少年事件における身体拘束と取調べのあり方について、社会全体で真剣に議論がなされるべきこと。真摯に障害者支援に取り組んでいる支援者が安心して支援に取り組めること。またそれによって利用者家族の方も安心して支援を受けられること。
私たち親や家族、当事者にとって、警察の現状を知り、警察に対して障害福祉への理解を求めていくことが必要です。
そのためにも、この事件の今後の裁判に関心を持っていただくため、担当弁護士の許可を得て、当協会のホームページに記者会見から、弁護士とお母さまの発言を文字起こしして掲載いたします。
なお、9/12のTBS「報道特集」内の警察への取材で、兵庫県警が「訴状の内容には我々が認識している事実とは異なる点がある。
その点は裁判で明らかにしていきたい。」と答えたことを合わせて記します。
◆参照元:
16歳の少女はなぜ餓死したのか 「人質司法」が奪った命(2026年6月17日)
※見出しは事務局にて挿入
代理人弁護士 向井義博氏の発言
本日はお忙しい中お集まりいただきましてどうもありがとうございます。私は本日神戸地方裁判所に、国家賠償請求訴訟を提起いたしました原告の代理人弁護士向井義博と申します。本件訴訟は16歳の少女、少女の名前は仮名とさせていただきます、ルナさんという風に表記いただければと思います。
ルナさんが、警察、検察による違法な逮捕、勾留、取り調べを受け、心身に深刻なダメージを受け、令和7年12月14日に命を落とした事件について、その母親が国および兵庫県に対して損害賠償請求を求めるものでございます。
本日は、訴訟提起にあたり、本件の概要および本訴訟に込めた思いをお伝えするために記者会見を開催いたしました。
出席者の紹介をさせていただきます。私およびこちら隣の佐々木正博弁護士は、今回の訴訟の原告の訴訟代理人となっております。佐々木弁護士からは後ほど本訴訟において特にお伝えしたい事柄などについてお話をいただきます。そしてこちら、お隣の方をご紹介します。本件訴訟の原告亡きルナさんの母親でございます。お母様も施設運営等の関係から匿名とさせていただきたいと思っております。表記いただく際はルナさんの母親という風にしていただきますようによろしくお願いいたします。お母様からは後ほど娘さんへの思いと本件訴訟に込めた願いについて直接お話をいただこうと思っております。それと、原告ルナさんのお母さんですけれども、事業所名とか運営法人名とかは、先ほども申しました通り、他の利用者さんの関係をもあって非公開とさせていただきます。そして今回の記者会見の映像写真等については、原告ご本人の顔は映さず、アクリル板越しの撮影という形でお願いいたします。あと声を使っていただく場合は、声の編成の処理をいただきますようどうぞよろしくお願いいたします。それでは座ってお話をさせていただきます。
まず事案の概要説明をさせていただきます。ルナさんについて、お話をいたします。
ルナさんは平成21年生まれ、逮捕当時、16歳の少女でした。ルナさんは障害を持つ方々の支援に真摯に取り込む母親の元で育ち、中学校卒業後は自らも障害者支援を生きる道と定め、母親が代表を務める障害福祉事業所を運営する法人の従業員として働いていました。障害のある方々に心から寄り添い、その支援に尽力していた16歳でした。
●バレンタインイベントと虐待通報
次に、事件のきっかけとなったバレンタインイベントと虐待についてご説明いたします。
令和7年2月15日、障害福祉事業所の利用者を対象にバレンタインイベントが開催されました。参加者は障害を持つ利用者さん26名、スタッフ9名の計35名です。ルナさんはスタッフの一員としてガトーショコラ作りの支援にあたっていました。ところがその年の4月1日、イベントに参加した利用者のKさんが、加古川市の障害福祉課において、ルナさんおよび、別の成人男性スタッフが利用者Sさんに対して虐待をしたかもしれないとの相談を行いました。これが端緒となり、Sさんの親御さんが4月12日に明石警察署に被害申告を行いました。
●突然の逮捕、勾留、接見禁止になった
続いて、突然の逮捕勾留接権禁止についてご説明をいたします。今からちょうど1年前、令和7年6月17日午前7時頃、明石警察署の多数の警察官が突然事業所に押しかけ、当時16歳のルナさんを任意同行の名目で連行しました。ルナさんの母親は事態を知り、あと30分ほどで着くので待っていてほしいと、電話で警察官に求め、担当警察官も了承しましたが、その約束を破って母親の到着を待たずにルナさんを連行しました。そしてその日の午前10時40分頃、ルナさんは明石警察署にて逮捕されました。翌18日、神戸地方検察庁の担当検事が勾留請求と接見等禁止の申し立てを行い、いずれも認められました。ルナさんは小野警察署に移され、弁護人以外の外部との連絡を一切立たれた状態で身体拘束を受けることになりました。私たちはルナさんの刑事弁護人を務めておりましたところ、この勾留に対して準抗告、接見等禁止に対して一部解除の申請を行いましたが、準抗告は棄却され、接見等禁止の一部解除も認められませんでした。主任弁護人を務めていた佐々木弁護士が担当検事と面談をし、障害者支援の現場の実情をよく知ってもらいたいと申し入れを行い、そしてルナさんはまだ16歳の少年であって身体拘束は避けるべきというように主張したのですが、担当検事には聞く耳を持っていただけませんでした。さらに担当検事は10日間の勾留満期の際、さらに10日間の勾留延長を裁判所に請求いたしました。これに対し我々は勾留延長すべきでないと裁判所に意見書を提出して主張したところ裁判所は勾留延長期間を10日間ではなく5日間の勾留延長を認めました。ところが担当検事はその延長された5日間が満了する日に再び5日間の勾留延長の申請をしたのです。担当検事はどうしても最長の20日間の勾留をしようとしたわけです。我々は裁判官と面談をしてその不当性を訴えた結果、当該裁判官は我々の意を酌み、2度目の勾留延長を却下する決定を出してくれました。しかしながらあろうことか担当検事はこれに対しても準抗告を申し立て、準抗告をする審議する裁判体がこれを認めてしまい、不当な身体拘束が続くことになってしまいました。
●留置場内での状況と救急搬送
続きまして、留置場内での状況と救急搬送についてご説明をいたします。
逮捕後ルナさんは身に覚えのない事実を突きつけられ、取り調べにおいて繰り返し自白を迫られました。16歳という年齢にも関わらず、脅迫的な言動や虚偽の事実の告知による自白誘導、さらには16歳の少女に対する発言としては非常に不適切な発言がなされていたことも被疑者ノート、我々がルナさんに差し入れをして書いていただいていたこの被疑者ノートに記録されています。ルナさんは身に覚えのない被疑事実によって身体拘束を受け恐怖と不安で留置場内において極度のストレスから食事がほとんど取れなくなりました。取り調べ中にフラフラする、息苦しいと体調不良を訴えましたが、なんら対応はなされませんでした。そして7月3日、すなわち2度目の勾留延長が開始された日、ルナさんは留置場内で2度嘔吐して倒れ、救急搬送されました。しかし病院での対症療法を受けただけで、栄養状態の著しい悪化に対する措置もないまま、その日のうちに再び留置場に収容されてしまいました。救急搬送の知らせを受けて、搬送先の病院に駆けつけた両親も接見等禁止命令を理由として、ルナさんに一目会うことすら拒否されてしまいました。我々はその日のうちに勾留の執行停止の申し立て、そして万一これが通らなかった場合に備え、再度の接見等禁止の一部解除の申し立てを行いました。すると担当検事は翌7月4日突然ルナさんを釈放しました。釈放翌日7月5日のルナさんの体重は27.7kgでした。逮捕前の6月13日に測った体重が37.5kgでしたから、身体拘束中に約10kgも減ってしまったわけです。
●釈放後されたが死亡
続きまして、釈放後の経過と死亡についてお話をいたします。
釈放後もルナさんは食事をほとんど受け付けることができませんでした。医師からは急性ストレス障害(ASD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、そして神経性食欲不振症等の診断を受け、複数の医療機関での治療を続けましたが、状態は改善されませんでした。ルナさんは釈放後も、また逮捕されてしまうかもしれないという極度の恐怖から、母親のそばを離れることができなくなってしまいました。笑顔は消えてしまい、常にこわばった表情で母親に怖いと繰り返し、毎晩のようにうなされていたと聞いています。その後もルナさんの状態は改善せず、令和7年12月14日午後5時23分、ルナさんは兵庫県災害医療センターにて息を引き取りました。享年16歳、亡くなる直前の体重はわずか20k、直接の死因は低栄養状態とされました。
●最初の虐待通報は誇張だった
続いて虚偽申告の発覚です。
ルナさんが亡くなった後、今年の3月、原告と面談をしたKさん、先ほど虐待の申告をしたということを申し上げたKさんなんですけれども、Kさんは、警察や関係機関に対して伝えた内容が、事実を誇張したものであったことを認めました。暴行の被疑事実とされた顎を抑えたのではなく顎に手を添えた。そして他にも虐待とは言えない行為についてオーバーに言ってしまったと述べ、自ら書いた手紙で原告に謝罪をしました。この手紙にはKさん自身によって、実際は顎に手を添えていた、オーバーに言ってしまった、そして自分が言ったことの振り返りをすると虐待ではなかったと記されています。
本件は不起訴処分で終了しました。少年であったルナさんが家庭裁判所に送致された事実もありません。法律上少年事件は捜査の結果、嫌疑が存在すると認められる場合には、全件を家庭裁判所に送致することになっています。しかしルナさんは家庭裁判所に送致されることはありませんでした。これが意味することは明らかです。すなわち犯罪を犯したと認定されることがなかった無実の少女だったのです。
それでは続きまして佐々木弁護士から、本件訴訟において特にお伝えしたいことをお話いたします。
弁護士 佐々木正博氏の発言
弁護士の佐々木正博です。よろしくお願いします。この件、刑事司法の問題としてはあまりに多数の問題点があります。ただここで全てを申し上げるわけにかないので、その中でも特に強く訴えたいこと、これをこれから5つのパートに分けて申し上げたいと思います。
概略として申し上げますと、人質司法の問題。あとですね、これ今先ほどから少年と申し上げておりますが、未成年者のこと、刑事司法の場では少年と呼びますので、女の子ですけど少年と呼んでおります。
●人質司法の弊害が最悪で悲惨な形で少女の命を奪った
ではまず、この件が少年に対する身体拘束の問題ということで申し上げていきます。
人質司法という言葉をご存知かと思いますが、逮捕勾留された人が取り調べで黙秘したり否認したりしていると、身体拘束が長期化し、その間家族などへの接見が許されない、保釈が認められないという刑事司法の悪しき運用のことを言います。逮捕勾留しなくても取り調べでの捜査を続けていくことは可能なんですね。そういった事件はたくさんあります。しかしですね、そのような事件であっても安易に、しかも、長期間身体拘束が認められているのが今の刑事司法の現状です。令和5年の第212回国会でも人質司法の問題が国会質問で取り上げられております。国民にも大きな関心事になっているのではないでしょうか。
そもそも裁判で確定するまでは誰もが無罪推定の原則及んでいますね。逮捕拘留は刑罰では決してありません。捜査機関はこの大きな原則に立ち返る必要があるのではないでしょうか。今回、その人質司法の弊害が最悪で悲惨な形で16歳の少女を襲ってしまいました。まずはこの人質司法の問題、これを強く訴えたいのです。
●16歳少女に対する身体拘束の問題
では個別に申し上げていきます。第1に少年に対する身体拘束の問題です。少年法では20歳未満の人たちを少年として刑事事件などにおいては、大人とは異なる取り扱いをしています。その目的は、少年の健全育成、生活や環境の調整といった大人とは異なる視点で対処していく、そういった扱いをしているんですね。
そして少年の健全な育成を目的とし、少年に対する勾留はやむを得ない場合に限ると明記しています。逮捕勾留の必要性の判断においても、被疑者の年齢は真っ先に考慮されるべき要素です。本件において、ルナさんは16歳でした。住居や就業先は明確。逃亡の恐れも罪証隠滅の恐れも存在しない状況でした。しかも被疑事実は暴行という中でも最も軽微な部類の行為でした。さらに言えば、4ヶ月も前に起こった事件です。それでもなお警察・検察は逮捕し、しかも接見禁止付きの勾留を求め、さらには勾留延長を2度も繰り返しました。たび重なる勾留延長の結果、ルナさんはトータルで18日間もの間、身体拘束を受け、その間、家族とも一切会うことのできない孤独に身を置くことを余儀なくされたんです。そして18日間にわる身体拘束が16歳の少女の心身に何をもたらしたか。本件はその答えを最も残酷な形で示してしまいました。
●取り調べの違法性と深刻さ
第2に違法な取り調べの深刻さです。ルナさんが身体拘束期間中につけていた被疑者ノートには、取り調べの言動が詳細に記録されています。逮捕初日から取調官は「本当はやったんだろう正直に言え」と断定的な口調で自白を迫りました。さらに誰々は言ったぞと共犯者とされる人物がすでに自白したかのように嘘を言ったり、みんなと言ってることが違うと事実と全く異なる嘘を言って不安を煽り、ルナさんを混乱に落とし入れ、錯誤に基づく自白を誘導しようとしました。これは犯罪捜査規範が明らかにしている違法な取り調べ手法です。また最初の勾留満期であった6月27日に「バイバイできると思ってんの、少年院に行きたいんか」という発言で勾留の継続や少年院送致をことさらに示唆し恐怖心を煽って、自白を迫る行為は脅迫的取り調べとして違法です。被疑者ノートにはルナさんが取り調べの言葉に対して怖かったと自ら記していた箇所があります。16歳の少女が感じていた恐怖の深さを私たちは受け止めなければなりません。さらに取り調べ中、取り調べ官はルナさんに対して好きなタイプ、好きな人はおらんのかと質問しました。これは捜査目的と何ら関係がなく、密室で年長の男性取り調べ官から受けた16歳の少女への性的嫌がらせであり、人格的尊厳の侵害に他なりません。
●留置場で少女は激痩せ
3つ目です。留置場での健康管理の問題です。刑事収容施設法は留置業務管理者に対し被留置者の心身の状態を継続的に把握し、適切な医療措置を講じることを義務づけています。ルナさんは勾留中に体調不良を訴えたにもかかわらず、何ら対応を受けられませんでした。体重が20日近くで約10kg近く減少するくらい痩せ細るといった異常事態はひと目見れば分かるほどであったと考えられますし、その間の栄養状態の悪化は日々の食事状況を観察していれば当然に把握できたはずです。そして救急搬送という事態が起きたにもかかわらず、たんなる対症療法に徹し、同日中に留置場に戻されました。これらは法律が課す健康管理義務の明白な違反です。
●捜査では他の参加者からの聴取なし
4つ目です。捜査のあり方の問題です。本件逮捕の根拠は、知的障害を有するKさんの供述のみでした。バレンタンイベントには35名もの参加者がいたにもかかわらず、Kさん以外の参加者への事情聴取は逮捕前には一切行われていませんでした。先ほど申し上げた通り4ヶ月期間があったわけなんですね。しかも客観的証拠の収集もなされていませんでした。にもかかわらずいきなり逮捕におよんだんです。ここで知的障害を有する方の供述はその認知、記憶、表現能力や非暗示性の観点から慎重な裏付け捜査が求められることは、捜査実務上の常識です。それにもかかわらず知的障害者単独の供述のみにて16歳の少女を逮捕するという判断は、合理的根拠を欠く違法な逮捕と言わざるを得ません。
後にKさん自身が認めたように、ルナさんが行ったのは顎を抑えたではなく、顎に手を添えた支援行為でした。これは虐待でも暴行でもありません。その後、Kさんは自ら手紙で謝罪しています。本件は国家権力の行使が1人の少女の命を奪った事件です。それまで障害者支援に全力を注いでいた母の背中を見て、自身も母のように障害者支援の道に身を捧げようと決意した1人の少女です。そんな少女が、いつものように障害者支援をしていた、ただそれだけで突如逮捕勾留され、その間、家族と会うことも一切許さ許されず、18日もの間、留置場での過酷、孤独な生活を強いられ、心に取り返しのつかない傷を負わせられた結果、最後は命が奪われてしまいました。警察が検察が障害者支援の現場を少しでも知り、障害者の特性を踏まえ、適正に捜査し、適正に手続きを踏んでいれば、ルナさんは今もきっと生きていたはずです。
●訴訟で明らかにしたいこと
私たちは本件訴訟を通じ、次の4点を明らかにしたいと考えています。
第1に、警察・検察による本件の逮捕勾留取り調べが法律に違反する違法な公権力の行使であったこと。
第2に、人質司法が重大深刻な人権侵害の問題を引き起こすこと。
第3に、その違法な公権力の行使がルナさんの命を奪う結果をもたらしたこと。
第4に、2度とこのような悲劇が繰り返させないよう人質司法、特に少年事件における身体拘束と取り調べのあり方について、社会全体で真剣に議論がなされるべきこと。真摯に障害者支援に取り組んでいる支援者が安心して支援に取り組めること。
またそれによって利用者家族の方も安心して支援を受けられること。
本件訴訟が、人質司法が重大な人権侵害を伴うこと、少年事件捜査の適正化と被疑者の権利保障の実質化につがることを、私たちは強く願っています。
私からは以上です。続きまして、亡くなったルナ様のお母様からご発言をいただこうと思います。
お母さんの発言
本日はお集まりいただきありがとうございます。私はこれまで素人ながらに憲法や法律は人を守るためにあり、人はお互いに助け合い、寄り添い、思いやり、そうして生きていくものだと思っておりました。そして娘も人を傷つけるのではなく、人を大切にすること。困っている人がいれば手を差し伸べること、苦しんでいる人がいれば寄り添うこと、特別なことではなく、当たり前のことだと思って過ごしてきました。
私たち障害福祉の現場では、人の暮らしの尊厳を守ることを大切にしながら、日々いいことも悪いこともお互いの気持ちを思い伝え、共に過ごしていく、その積み重ねの中で人を思いやる心が動き支え合う、障害福祉はそんな居場所です。そんな思いやりを誰よりも大切にしていた娘は誰が笑っていたか、不安そうだったか、頑張っていたか、いつも人のことを考え、人を大切に思う日々を過ごしていました。
ですが、娘は突然逮捕され、勾留され、外部との接触を断たれ、心身が大きく壊れてしまいました。釈放されたその日、変わり果てた姿となり、回復は難しく、娘は命を落としました。なぜこのようなことが起きたのか、未だに理解できていません。ともに働いていた仲間、施設に通う方々が深い悲しみの中で、彼女との再会を毎日毎日願う日々を過ごしてます。
1人の人間として母親としてお聞きください。警察・検察とは間違ったことに直面したら公平に扱い、未来を支え、人を守ることができる立場であり、国民を守るため正しいことを伝え、間違っているならば素直に認め謝り、世の中を平和に支えていく、そんな存在ではなかったですか。教えて欲しいです。娘に何が起きて、なぜ逮捕され、勾留され、そしてなぜ命を落とすことになったのか。なぜ16歳の娘が信じていた優しさや思いやりが十分に届かなかったのか。
障害ある方々に「私はこんな悲しい姿、忘れられない。」「僕たちのお母さんだからずっと一緒にいる。」「支えるから。」彼らの心には娘が思いやる心が伝わっています。いつも明るく楽しく過ごしていた障害福祉の場所、日々をどうか返して欲しいです。そして娘が最後まで大切にしていた人を思いやる心はこの社会には存在していると信じてます。16歳で亡くなった娘の声を1人の少女の声として終わらせないでください。
私は誰かを憎み、誰かを傷つけたいのではありません。真実を教えて欲しいです。本日の提訴は事実を明らかにするためのものです。もし過ちがあったのであれば、それを認め正していただきたいです。事実が歪められることなく、正しく向き合い、そんな社会であって欲しいと願っています。どうか先入観ではなく事実に基づいて、この問題を見ていただきたいと思います。本日はありがとうございました。
以上