神田裕子著の『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)について
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神田裕子著の『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)について
~当事者の気持ちに真摯に向き合ってほしい~
2025年5月12日
一般社団法人 日本自閉症協会
会長 市川 宏伸
出版前より多方面から批判が寄せられたこの本は4月24日に出版されました。
この本で「自分はまわりに迷惑をかけている」と思い悩み、心身に不調をきたす発達障害の人がいないか心配しています。
気持ちが不安定な人や心身が不調になりそうな人は、あえて読まないことをお勧めします。
日本自閉症協会は出版前の4月18日に、表紙や帯の内容からこの本が「障害に対する誤解を生み、差別や偏見、分断を助長するものと判断します」として意見を述べました。
指摘した内容や表現が変更されないまま発売されたことは、とても残念です。
発売後にこの本を読んでも、4月18日の評価を変える必要はありませんでした。
出版社は発達障害当事者協会「三笠書房への質問状」に対して4月24日に回答されました。しかし、その回答は誠実さに欠ける内容でした。
出版社ならびに著者は、ぜひ当事者諸君との建設的な対話の機会を設け、彼らの声に耳を傾けていただきたいと思います。
当事者の声を聴き編集に反映するプロセスは、出版社の社会的責任の観点からも重要です。
ましてや、職場における発達障害の専門家を名乗られる著者は当事者と対話する姿勢も十分に有しておられるものと信じています。
当協会には、ASD特性がありながら働いている当事者からの相談がありますが、それだけでなく、雇用する企業からの相談もあります。
私たちの基本的考えは、一方に肩入れするのではなく、双方の困りごとを聴き取り、その要因を軽減するための調整としています。
日本自閉症協会はASDやADHDなどの発達障害の社員と周囲との良好な関係づくりに引き続き注力するものです。
以上