(情報共有)知的障害児のインクルーシブ教育に関する海外論文

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下記は知的障害児のインクルーシブ教育に関する海外論文です。
現在、知的障害の生徒について、インクルーシブ教育と特別支援教育はどうあるべきかが海外でも議論されています。
その一つを参考までに紹介します。

「Inclusive Education, Intellectual Disabilities and the Demise of Full Inclusion」(2024)
https://www.mdpi.com/2079-3200/12/2/20

以下、日本自閉症協会 広報による翻訳・要約

1. 知的障害のある子どもに対する「完全インクルージョン」は行き詰まりつつある
・インクルージョン教育は世界的に広がったが、知的障害のある児童のニーズに十分対応できていない。
・特に、社会性・職業スキル・生活スキルなど、成人期への移行に不可欠な教育が通常学級では提供しにくい。

2.理論面の問題:サラマンカ声明の誤解
・サラマンカ声明(1994)は「多くの子どもは通常学級で学べる」としたが、重度の知的障害のある子どもには特別学校・特別支援学級が必要と明記している。
・にもかかわらず、「サラマンカ声明=完全インクルージョン支持」という誤った解釈が広まった。

3. 実践面の問題:完全インクルージョンはどの国でも実現していない
・イタリアやカナダ・ニューブランズウィック州は「完全インクルージョンの成功例」とされるが、実際には特別学校が残存し、現場からは「教育が成り立たない」との批判も多い。
・世界的に見ても、重度知的障害のある子どもは依然として特別学校に多く在籍している。

4.既存研究では、インクルージョンが特別支援教育より効果的という証拠はとぼしい。
・ニュージーランドやイギリスの事例でも、特別学校から通常学級へ移った生徒は、卒業後の失業率が非常に高かった。
・知的障害のある若者には、職業教育を含む特別支援が長期的に有効。

5.完全インクルージョンは非現実的。必要なのは「インクルーシブな特別教育」
・インクルージョンと特別支援教育を統合した「Inclusive Special Education」を提案。
・すべての子どもを通常学級に置くのではなく、個々のニーズに応じて通常学級~特別学校までの連続的な選択肢を確保すべき。
・特に中・重度知的障害の子どもには、特別支援学級や特別学校が不可欠。

以上