津久井やまゆり園事件から10年を迎えて

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津久井やまゆり園事件から10年を迎えて

2026年7月17日
一般社団法人 日本自閉症協会
会長 市川宏伸

2016年7月26日、神奈川県立「津久井やまゆり園」において、多くの尊い命が奪われ、多くの人々が傷つけられるという痛ましい事件が起きました。あれから10年という大きな節目を迎えます。

事件が起きた場所は、利用者の皆さんにとって、日々安心して暮らす生活の場でした。その場所が突然、恐怖の現場へと変わったのです。その時に利用者の方々が味わったであろう恐怖を思うと、胸が張り裂ける思いです。無抵抗の人々の命を奪ったU死刑囚に対し、強い憤りを禁じ得ません。

私たちは、あの日失われた命に改めて深い哀悼の意を表するとともに、傷を負われた方々やご家族の痛みに寄り添い続けます。
私たちは、この事件を決して風化させず、二度とこのような悲劇を繰り返させないという強い決意を新たにします。言葉で意思を伝えることが難しい重度の知的障害や自閉スペクトラム症のある人も、安心して生きていける社会は、すべての人にとって安心して暮らせる社会です。その存在自体にかけがえのない価値があることを、私たちはこれからも社会に訴え続けていきます。

しかし、振り返れば、2004年の福岡県・カリタスの家での暴行・虐待事件、2013年の千葉県・袖ケ浦福祉センターでの傷害致死事件など、痛ましい事件が繰り返されてきました。今年公表された厚生労働省の調査では、障害者虐待のうちグループホームで発生したものが全体の約3割を占めて最も多く、家族による虐待も過去最多を更新しています。このように、やまゆり園事件という大きな教訓を経た今なお、障害者虐待は後を絶っていません。

障害者福祉では、効率性や経済性が重視される議論が増えています。しかし、それらの議論においても、人の命と尊厳という福祉の根本的な価値が決して後景に退くことがあってはなりません。障害者の命と尊厳を守るためには、制度や法律を整えるだけでなく、支援者が疲弊することなく、高い倫理観を保ち、日々の実践に誇りと意欲を持って働ける環境を整えることが極めて重要です。そして支援の仕事は、障害のある人を支えるだけでなく、安全で、人を大切にする社会の実現を支える重要な役割を担っています。そのことを社会全体で認識し、その専門性と献身を正当に評価することが必要です。そのことが福祉の質を高め、ひいては利用者の安全を守る基盤になると考えます。

私たちが強く求めるのは、本人が安心して暮らせる場所が、これからも継続的かつ安定的に確保されることです。将来にわたって、誰もが排除されることなく、穏やかに暮らし続けられる確かな居場所が必要です。

障害の有無にかかわらず、すべての人がその人らしく安心して安全に暮らせる社会の実現に向けて、私たちはこれからも皆さまとともに歩み、声を上げ続けていきます。

以上