自閉症の人たちのための
防災ハンドブック
−支援をする方へ−

社団法人 日本自閉症協会
<目次>
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当ページは当協会が作成した「自閉症の人たちのための防災ハンドブック−支援をする方へ−」を携帯電話で利用できるように変換したものです。大きさの違いなどから、デザインを中心に細部に若干の違いがありますので、ご留意ください。
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目 次
まえがき ―理解から支援へ
だれにでも安心な街づくりを
自閉症への理解を
災害時、救助にあたる方へ
 安否確認に気をつけて
 「要援護者名簿」と地域の助け合いで
 気をつけていただきたいこと(ケガや病気、パニック)
 災害によるPTSD(外傷後ストレス障害)に注意
避難所では
 本人・家族へ支援していただきたいこと
 避難所に専門スタッフとして入って
 具体的な生活の配慮を
 福祉避難所が必要
 就労している自閉症の人に配慮を ー就労先の方へ
避難所に行けない人たちもいます
 やむを得ず車中泊
 災害時の会員ネットワーク作りの提案
災害の現場からQ&A
復興に向けて ―本人の環境を一日も早く日常に戻すこと
自閉症の人と家族への心の支援を
防災教育・防災訓練を ―関係機関と力を合わせて
阪神・淡路大震災を経験して ―日常の活動が全てを決める
あとがき
チェックシートを活用しましょう


「要援護者名簿」と地域の助け合いで


■ 要援護者名簿で安否確認を
 柏崎市西山町(旧西山町)では、「個人情報と生命、どちらが大事ですか?」のキャッチフレーズで、要援護者を民生委員、町会長が100%把握していました。また、日頃のつきあいでお互いを良く知っているという利点もあって、2007年新潟県中越沖地震で被災したその日のうちに全員の安否確認ができました(要援護者名簿に登録したことが、うまくいった例です─出版部注)。
 (柏崎市西山町事務所に取材)
■ 見守ってくれてありがとう─ご近所の付き合いが一番
 2004年新潟県中越大震災発生直後に、まず手を差し伸べてくれたのは近所の方でした。中学生と自閉症の小学生のきょうだいを家に残して、お母さんはスーパーに買い物に行っていました。とるものもとりあえず帰宅したところ、普段から付合っている近所の方が子どもたちを助け出し、避難所の公園で毛布をかけてくれていたのです。普段からの向う三軒両隣の付合いが一番だとつくづく思いました。
 (新潟自閉症協会 坂内正文)
■ こんなサポートがあったら─地下鉄事故で
 2007年都営地下鉄大江戸線の停電事故の際、知的障害の青年(37歳)をさりげなくサポートされた方がいました。その方は、動かない電車の中でとまどっていた青年を、JRの駅まで一緒に歩き、電車に乗せてくれたそうです。お母さんのお礼の電話に、その方は「たまたま、そばにいただけ」と言われたとのこと。緊急時こそ、このような方が一人でも多くいてくださると安心です。
 (朝日新聞の投書欄から)

--- チェックシート ---
□ 要援護者名簿はありますか
□ 家の中にひとりで取り残されていませんか
□ 電車やバスで不安そうな人がいたら誘導を
□ ケガはないか、健康状態の確認を
□ 連絡先の確認を
□ 家や学校、所属先に安否の連絡を
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◎特に気をつけていただきたいこと
【ケガや病気が疑われる場合】
ケガや痛みを伝えられない人もいます。また痛みに鈍感な人もいます
ケガをしていないかどうか、よくみてください
本人が薬や「おくすり手帳」を持ってないか確認を

【 パニック状態になった場合】
急に大きな混乱(パニック)をみせる時がありますが、それは不安の現れです
本人は説明できないため原因がすぐに分からないかもしれません
--- チェックシート ---
□ ケガをしていませんか
□ ガラスでの切り傷や、打撲はありませんか
□「おくすり手帳」を確認しましたか
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災害によるPTSD(外傷後ストレス障害)に注意

■ 災害時の情緒的反応のひとつに「 外傷後ストレス障害(PTSD)」があります
 非常に強い恐怖・驚愕・絶望を伴う体験をした後に起こる特徴的な症状であり、体験後数週間から数年にわたって持続したり、数ヵ月以上たってから症状が現れることもあります。子どもに見られるPTSDの症状は次の3つです。
@怖体験を思い出して混乱する(フラッシュバック)
A反応が低下する―災害の恐怖体験を避けるため、人との接触を嫌い、まわりの人に反応しなくなる
B醒レベルが上昇する―恐怖が沸き起こり落ち着かなくなりイライラし、情緒不安定になる
■ 子どものPTSDへの対応
●乳幼児への対応
@言葉かけ、抱きしめるなど身体的な接触を行い安心感を与える
A温かい飲み物を与え、安心して眠れるように配慮
C 由に遊べる場を用意し情緒的解放を図る
D どもの体験を十分に聞いてやる
D恐怖の体験を思い出してパニックになったら「今は大丈夫」と時間をかけて分かりやすく説明
●小学生への対応
@勇気づける
A手伝えることは手伝わせ、自分が役立っていることを自覚させる
B気がかりなことを話しあい、災害時と今は異なることを自覚させる
C友だち・仲間とよく遊ぶ
Dペット・玩具を失った悲しみについては十分に聞いてやり、誰でも悲しいのだということを伝える
E 害についての質問には真剣に答える
『教職員のための防災事典』「第7章災害と子供のメンタルヘルス」(山崎晃資)より抜粋
「自閉症の人と家族への心の支援を」(P21)も参照

避難所では

本人・家族へ支援していただきたいこと
■ 福祉避難所の設置と周知を
■ 被災障害者相談センターの設置を
■ 自閉症支援専門スタッフの配置を

【 自閉症の人が避難所に行けないのは…】
■ いつもと違った場所、騒がしい音など様々な刺激が苦手
■ まわりの状況や他人の気持ち、特に「暗黙の了解」が理解しにくい
  例えば、被災時に、避難所で、
  「共同生活なので譲り合いながら、お互いの迷惑にならないように、みんな我慢している」
  「具合が悪くて寝ている人がいるから静かにしなくてはいけない」などが分かりにくい
  そのため、本人にも家族にも負担がかかり、家族も遠慮して、避難所へ行くことができず、壊れた家・車の中で過ごさざるを得ない人もいます

トラブルの例
■ 走り回る
■ 急に走り出す
■ 大声を出す
■ その場にそぐわない発言で相手を怒らせる
■環境が変わり、夜、眠れず騒ぐ

避難所に専門スタッフとして入って

2007年新潟県中越沖地震の時、ヘルパー2名と地震の翌日の夜に柏崎市入り。設置された「被災障害者相談センター」の相談員として活動しました。その際感じたことを以下に整理してみます。
 (社福・新潟太陽福祉会 坂井 賢)
--- チェックシート ---
□ あなたの地域には福祉避難所がありますか
□ その場所を本人や支援者に知らせていますか
□ 被災障害者相談センターの設置を計画していますか
□ 自閉症支援専門スタッフ(腕章などの目印)を配置する計画がありますか
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具体的な生活の配慮を

 わがままではなく、障害の特性であることを理解してください ■ 座布団や椅子などで居場所を設定パーティション(間仕切り)の設置
大勢のなかでは混乱する人がいます
居場所をわかりやすく指示

■ 簡易式トイレや、洋式便座を用意
こだわりがあって、洋式トイレしか使えない人もいます
■ 食べ物への配慮
感覚過敏のため、特定の食べ物しか食べられない人がいます
■ 物資は、個別に配給を
順番を守るということが、なかなか分かりません
子どもを一人にしておけないので、家族は取りに行けないこともあります

■ 入浴の付き添いを
同性の方、ボランティアをお願いします

■ 情報の連絡も直接本人・家族に
本人や家族に直接情報が届く方法を考えておく
--- チェックシート ---
□ パーティション(間仕切り)の用意
□ トイレ(洋式、簡易式トイレ、洋式便座)
□ 入浴の付き添い
□ 避難所にも常時、専門スタッフを
□ 個別の対応をしていますか
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福祉避難所が必要

 平成12年9月11日、東海地域で豪雨による大水害が起きました。広報車の避難の呼びかけも雨音がかき消すほどの豪雨で、名古屋市の他、多くの地域で水害による避難者がでました。
 愛知県自閉症協会の会員で被災しても避難所に行った人は少なく、本人への負担も大きく、気遣いが大変な避難所よりも、車か家で過したようです。東海地震の可能性も高い地域ですが、人口5万人弱の私の町(東浦町)には、福祉避難所はないらしいと、知的障害者育成会の人たちと一緒に問い合わせたところ、私はその存在を知りませんでしたが、勤労福祉会館がすでに福祉避難所として選定されていることが分かり、安堵しました。現在は、防災マップにも明記されていて、誰にでもすぐに分かり安心できます。
 この施設は室数も多く、ホールもあり、要援護者の特性に合わせて必要な災害時支援を受けることができそうです。また、何よりも顔なじみの人たちと過ごせることで、本人たちは安心できることでしょう。避難所があっても、そこに居ることが難しい自閉症の人たちにとっては、福祉避難所が非常に重要であり、すべての自治体に必要なものです。
 (愛知県自閉症協会 大森隆太)

就労している自閉症の人に配慮を

(内閣府資料を参考に出版部で作成)

避難所に行けない人たちもいます
─この人たちにこそ、福祉避難所が必要です  自閉症の人たちは、生活環境の変化に弱く、避難所での生活が難しかったり、家族も遠慮して、壊れた自宅に残らざるを得なく、自家用車に車中泊をしている場合があります。配給の受け取りに行きたくても、子どもを置いて行けない、連れて行けない家族もいます。その人たちにも配慮を

やむを得ず車中泊

 土曜日の夕方5時56分、私は車の運転中に被災しました。辛うじて帰宅。家族の無事を確認。町内会の指示で車に家族と毛布を積み、近所の方と公共の駐車場での避難となりました。養護学校小学部6年生、重度の自閉症のわが子は何が起こったのかも理解できずに、興奮し、奇声を発し、窮屈な車内で姿勢も変えられず、朝方になり疲れて眠りました。被害の大きな地域では、自閉症の家族は、避難所にも入れず車中泊や被害の少ない親戚の家に避難していました。
(新潟自閉症協会 坂内正文 2004年中越大震災の体験から)
--- チェックシート ---
□ 避難状況の確認(在宅や車中泊など)
□ 食事や毛布などの配給リストに漏れはありませんか
□ 車中泊エコノミー症候群など、健康上の注意を
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新潟県自閉症協会災害時の会員ネットワーク作りの提案

 2004年新潟県中越大震災の時の教訓を生かし、2007年の中越沖地震では、新潟県は広域なので、支部役員・事務局と被災地域役員の緊急連絡により、被害の少ない地区分会会員の協力も得て、携帯電話、メールなどで安否確認が短時間で出来ました。また、安否確認が困難な場合は、所属先(学校・事業所)への問い合わせが有効な場合があります。被災地からの情報発信役を県支部が担い、共有した会員の声を一括して、行政や相談支援機関に伝えたので、関係機関の相談支援体制が確立されました。
 また、自宅以外の連絡先(携帯電話、メール、所属先)など、会員緊急連絡簿の作成、災害伝言ダイヤル171(p19参照)の利用法を会員に周知させることも重要です。
2007年中越沖地震当時に作成
(新潟自閉症協会 坂内正文)
災害の現場からQ&A
Q1 --------------------
何がほしいのか分からなくて困りました。

「水要りますか?」「ミズイリマスカ?」、「ご飯は?」「ゴハンハ?」
このようにオウム返しされては、要るのか要らないのか、あるいは何か他にほしい物があるのか分かりません・・
       (消防署員)

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 実物(食べ物、飲み物)を見せて聞いてください。
 自分から要求(例えば「おなかがすいた」「のどが渇いた」など)を伝えられない人もいます。

Q2 ------------------------
 どうすればこちらの指示をうまく伝えられますか?
例えば座っていてほしい、動かないでほしいときなど、どう説明すればよいでしょうか。
   (ボランティア)

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 「座って」という声かけで座らなかったときは「椅子」や「座布団」を見せて身振り手振りで示して「ここに座ってね」と言ってください。
 絵カードなどを使って伝えたほうが分かりやすい人もいます。
 動作ごとに言葉を区切って「立って」→「おいで」
→「座って」のように声をかけてください。

Q3 -------------------
同じことを何度も聞いてきて、答えても、質問がとまりません。

  (ボランティア)
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 話している言葉とは関係なく、不安のあらわれかもしれません。何回でも聞いてあげてください。状況から推測されること(例えばテレビが見られない)を聞いてみることも一つです。また、自分の欲しい答えを自分の決めた言葉で言ってもらいたいだけのこともあるので、同じ質問を返してあげると、答えを言ってくれたり、納得して質問を止めることがあります。

Q4 -------------------
急に耳をふさいで騒ぎだしました。どうすれば落ち着きますか。

 (警察官)

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 子どもや赤ちゃんの泣き声や、体育館などの反響音が苦手なのかもしれません。
 さしあたり静かなところに移動させ、しばらく様子を見てください。
 刺激を遮断することも有効です(耳栓をつける、ヘッドホンをつけて好きな音楽を聴く、毛布をかぶるなど)。

Q5 -----------------------
【災害時】おなかがすいているようなのに、おにぎりを渡しても食べません。

  (避難所スタッフ)
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 食べ物にこだわりがあるのかもしれませんし、食べ慣れていないのかもしれません。また、体調によるのか、環境の変化のせいか、何か理由があると思います。わがままではないことを理解してください。
 別の食べ物をすすめてみてください。
 食べ物に関する注意事項を「サポートブック」(P18)で確認してください。

Q6 ----------------------
避難所で、「テレビが見たい」と騒ぎます。

「(テレビが見たいから)電気買ってきて」と言われても・・
(避難所スタッフ)
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 今は見ることができないことを伝えます。
 本人の好きそうなもの(本、ゲーム機、携帯音楽プレーヤーなど)を渡したりして、落ち着くよう試みてください。

Q7 -----------------------
はしゃぎ方が強すぎるような気がします。

(看護スタッフ)
 疲れている時や、初めての場所なので興奮しているのかもしれません。
 また、体調の変化を示す前兆の場合がありますので、よく観察して対応してください。
 発熱の前や、てんかん発作の前兆ということも考えられます。

Q8 ----------------------
包帯をすぐに取ってしまうので困っています。

(看護スタッフ)
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 傷にもよりますが、化膿しないように十分消毒して様子を見てください。
包帯やカットバンなどをすぐにとってしまう人の場合、適宜、消毒してください。

Q9 ----------------------
避難先で処方薬がなくなりそうです。

  (親)

 まず医療スタッフを探しましょう。
 また、最寄りの病院に問い合わせてください。
「サポートブック」や学校の「緊急連絡カード」に処方薬、病院名、調剤薬局名の記載があれば、処方してくれます。また[おくすり手帳]、「処方箋のコピー」があれば見せてください。
何よりも、お薬がなくなる前に早めに相談してください。

Q10 --------------------
今回の地震では、非常ベルを鳴らしても分からない人もいました。どのように対応すればよいでしょうか。

(施設職員)
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 自閉症の人にとってシグナルは分かりにくいものの一つです。個別に声かけをしてください。
 また、学校、施設などでは繰り返し避難訓練が必要です。ただし、最初は混乱する人もいるので、あらかじめ説明したり、どうすればよいかを明確にしておくなどの手続きを決めてから実行することです。

Q11 --------------------
電車が止まって動かなくなりました。困っているようなのですが、どのように声かけをすればよいでしょうか。

 (駅員)
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 いつもと違う状況が起こって、どうしてよいか分からず、とまどっているのだと思います。このような場合には、「大丈夫だよ」と声をかけ、安心させてから、名前を聞いて、保護者・支援者に連絡してください。

Q12 --------------------
「ガッコ、ガッコ イク(学校、学校行く)」と騒ぎます。

 (自治体職員)
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 自閉症の人たちはいつもの生活が一番安定していられるので、そこへ戻りたいのです。学校や通園施設の再開予定日が分かれば、カレンダーなどを見せて説明してください。また、学校の被害状況を本人に見せて、納得してもらうのも一つの方法です。
 ただ本人が納得するまで時間がかかるので、待ってあげてください。

Q13 --------------------
避難所での生活が長びいて、本人も家族もイライラしてきました。どうしたらいいでしょうか。

 (母親)
 カウンセラーや主治医に相談してみてはどうでしょうか。
 また、野外で体を動かせる遊びや運動もいいかもしれません。
 可能であれば散歩などを毎日の日課として行えれば、気分転換にもなることがあります。ボランティアの方に連れ出してもらって本人も発散し、お母さんも休めるといいですね。
Q14 --------------------
在校時、就業中などに災害がおこったときの対応はどうなっていますか。親か関係者が迎えにいくまで保護してほしいのですが、どのような方法がありますか。

 (親)
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 学   校:「引渡しカード」「緊急時連絡カード」等を作成しているところもあります。保護者の方は確認をしておいてください。
通所施設:引渡しの方法を、本人、家族、施設側と、普段から対策を立てておくことが必須です。

Q15 --------------------
本人のことが分かるようなものがあればよいのですが・・

 (自治体職員)
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 「サポートブック」などを活用してください。
 本人のコミュニケーションのとり方、『配慮点』等を書き込んだ「サポートブック」を持っているかも知れません。自閉症の人は一人ひとり症状も対応も違うので、それぞれの人に合った支援をすることができます。

Q16 --------------------
どうしてほしいのか、言葉で言ってくれないので分からなくて困っています。なにか工夫はないでしょうか。

 (駅員)
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 ・言葉が不十分だったり、発音が不明瞭で聞き取れない人でも、字を書いて意思を伝えられる場合があります。
・コミュニケーションのための支援カードの活用 実物(下車駅や自宅が分かるための路線図や、地図)を見せたり、何を要求しているか知るために「トイレ」「食べているところ」や「携帯などで電話をしているところ」などの写真・絵のカードを用意しておいていただくと助かります。

Q17 --------------------
有効な安否確認の方法には、どんな方法がありますか。

(民生委員)
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 区域の自閉症の人の、災害時の安否確認の方法を、日頃から準備しておいていただきたいと思います。
 安否確認については、次のような方法があります。
NTT災害用伝言ダイヤル171の利用 体験期間 毎月1日(1月1日は除く)、
     毎年1月15日から21日、
     8月30日から9月5日
災害用伝言板サービス 災害発生時などに、携帯電話を利用して安否情報を登録、家族や友人の安否情報を携帯電話やパソコンから確認できます。
Q18 --------------------
避難場所の標識を教えて下さい。
  (親)  下図のような「広域避難場所」のサインと標識を普段から確認しておくとよいでしょう。自閉症の本人への防災教育として、災害時のユニバーサルデザインの学習を。

「広域避難場所」のサイン
(JIS案内用図記号)

避難標識、長野市の例

避難標識、高岡市の例

非常口
※非常口のマークは世界共通のマークです。

 以上は、あくまでも一般的と思われる対応の仕方です。
 自閉症の人はその特性・特徴が一人ひとり違うので、専門スタッフの支援を求めるようにしましょう。

復興に向けて
本人の環境を一日も早く日常に戻すこと

■ 復興対策と同時進行で
 自閉症の人たちや家族の困難は、被災後も大きいものです。
 私の経験では、自閉症の人たちは「毎日同じ時間になったら通所しなければならない」ということが気にかかって大変でした。
 一日でも一時間でも早く非日常性を解消し、日常に戻すことが自閉症の人たちには一番だという気がします。復興対策をやりながら日常に戻ったらいい。
 例えば「危険がない限り、そこで作業ができたらいい」。とにかく日常に戻すことが大切です。
(社福・愛心園 福田和臣)


■ 専門の相談員によるカウンセリングを
 自閉症の子どもは、日常に戻るまでに大変な思いをしました。「今日は月曜日なのに何で学校がないんだ」「今日は学校に行く日だよね」など「学校、学校」と言い続けるため、日常に戻るまでにすごくストレスがかかりました。その対応として専門の相談員による本人・家族へのカウンセリングが必要です。
 (新潟自閉症協会 坂内正文)

■ 成年後見でセーフティネットを
 災害、ことに地震では、だれが被害者になるか分かりません。親は、自分は大丈夫と思いがちですが、子どもは無事で、保護者が被災してしまう場合も十分想定されます。そのためにも、成年後見制度、特に法人後見の準備をすすめておくことが安心につながります。
(社福・愛心園 福田和臣)

--- チェックシート ---
□ あなたの地域に、専門の相談員がいますか
□ 成年後見制度をすすめていますか
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自閉症の人と家族への心の支援を
生きていく意欲を失わせず、家族と本人の 心理的健康の回復を信じて関わること
■ 自閉症の人に対して
「この災害にあって驚いたでしょう」─安心するように伝える
 自閉症の人は、安心できる人とそうでない人とを見分けます。まず支援者は自分が安心できる人だと知らせてください。それには終始穏やかに優しくしてください。「この災害にあって驚いたでしょう」という気持ちを理解していることを伝えることにより、自閉症の人は落ち着いてきます。
 高機能自閉症やアスペルガー症候群の人に対しても同様にしてください。また、言葉を相手に通じるように選んで、コミュニケーションを持ち、本人の言いたいことを聞くように努めてください。

褒めること→見通しを持たせること→生きていく意欲をもたせること
 この大変な災害を切り抜けたことを「よく我慢したね」「君はあの災害で逃げられたのだよ」「家の人たちと一緒に逃げられて偉かったね」などと褒めてください。
 そして、これから先に起きることを説明します。支援者は、繰り返し状況を説明し、本人の気持ちを言葉にすることで、援助したい気持ちを伝えてください。障害があっても安心して生きていく意欲を失わせないように関わっていくことが大切です。

■ 家族への心の支援 ─まず家族を落ち着かせること
 家族への心の支援は、家族の絆が強められるような方向での配慮が必要です。
 まずそのためには、家族が落ち着くことが基本であることを伝えます。
避難所生活で親のストレスは人一倍たまっていきます。親の気持ちが鎮まり、生活が安定するように支援することです。新潟県中越大震災のとき、阪神地域の被災者がかけつけて経験を語り落ち着かせたように、親同士のピアカウンセリングも効果があります。
(社団法人日本自閉症協会会長 石井哲夫)



防災教育・訓練を―関係機関と力をあわせて
■ 防災マップを作ろう、避難所体験をしよう ―三重県の防災教育
 1944年の東南海地震の津波で589人の死者・行方不明者を出し、これからも東海地震等の発生が心配される三重県では防災教育に力を注ぎ、啓発用ビデオ、地震防災ガイドブック等を作成、特別支援学校(養護学校)を含む県内全ての学校に配布。発達段階に応じて、自分たちで調べたり体験したりなどの学習を積極的に行っています。

■ 水害予測のために関係機関とのネットワークの構築を
       ―けやきの郷(埼玉県)の水害経験から
 けやきの郷が水害にあい(1999年)、入所施設にどっと水が入ってきたとき、自閉症の一人は危険が分からず、リビングで座って水をピチャピチャしているだけでした。避難に導くことの重要性を痛感。現在では、インターネットで水位情報を定期的に確認、水害が予想される時は行政に連絡し、近隣の公民館を避難先として利用。このようなネットワークを構築することが重要です。
 (社福・けやきの郷 佐々木敏宏)

--- チェックシート ---
□ あなたの学校・施設では、自閉症に特化した防災教育・訓練を行っていますか
□ タウンウオッチングをしたり、防災マップを作成していますか
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阪神・淡路大震災を経験して
―日常の活動が全てを決める

天災は平等ということはありません弱いところに「より厳しく」ふりかかりますいざという時・災害時の底力をつけるには「日常の活動」の充実を!

■ 障害者施設も地域の拠点
 阪神・淡路大震災を経験して一番言いたいこと。それは、防災のポイントは「日常の活動が全てを決める」ということです。例えば、法定施設はハード面で災害に強く、ソフト面でも、どんなに障害が重い人にでも対応できます。しかし、日々の施設のあり方や、積み上げてきたものが重要です。近所付き合いや、「報告・連絡・相談」がしっかり出来ていると、いざという時にも力を発揮します。

■ 情報発信の基地としての機能 ─日頃からのネットワークづくりを
 災害時には、情報収集が重要ですが、施設には、施設間、施設と行政、医療機関、保護者等とのネットワークが普段から整備されています。初動態勢の中で最も重要な安否確認と被災状況の把握が思いの他早くできたのも、それぞれが所属している施設、学校、作業所との連携が日頃からなされていたからです。
 また、拠点としての存在のためには、地域の避難所になることも考えて、日常から最低3日分の食料や飲料水、燃料の備蓄、人的資源・経済的資源・社会的資源の準備が必要です。

■ 司令塔としてのポイント
(社福・愛心園 福田和臣)


あとがき
 自閉症の人たちをとりまく全ての方々に役立てていただきたいとこの冊子を作りました。
 自閉症の人たちはまじめに一生懸命生きていますが、想像力に乏しく、とっさの時の行動がうまくとれず、「毎日が災害」ともいえます。何時どこで起きるか分からない天災はもとより、毎日の生活でのちょっとしたトラブルにも役立てていただけると幸いです。
 ご協力いただいた皆様に感謝申しあげます。

企  画:
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自閉症の人たちのための防災ハンドブック―支援をする方へ―
平成20年7月10日 第1版第1刷
発行人 社団法人 日本自閉症協会 会長 石井哲夫
〒104-0044 東京都中央区明石町6−22 築地622
電話 03−3545−3380  Fax 03-3545-3381
E-mail asj@autism.or.jp
URL http://www.autism.or.jp
印刷所 コロニー印刷
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独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業


チェックシートを活用しましょう
―自閉症の特徴に配慮した対応を
行政関係(警察、消防、児童相談所、福祉事務所など)、福祉関係者、企業、学校、福祉施設もチェックシートをぜひ作成してみてください。
災害に備えて
□ 要援護者名簿の作成をしていますか
□ 避難経路の案内は周知されていますか
□ 避難所も周知していますか
□ 福祉避難所を設定していますか
□ 災害備品は十分準備していますか
□ 自閉症の理解・支援の研修の実施をしていますか
 ―警察、消防、自衛隊、電車・バス乗務員、民生委員などに対して
□ 自閉症支援の専門家はいますか
□ 自閉症の人にも分かる防災教育をしていますか
□ 障害者も一緒に防災訓練をしていますか
 ◇ 「地震体験車」体験は?
 ◇ 災害に備えての宿泊体験は?
□ タウンウオッチングをしたり、防災マップを作成していますか
□ 事前に家庭と打ち合わせをし、本人に確認していますか
 ◇ 連絡手段や集合場所は?
 ◇ 安否確認の方法は?
 ◇ 通勤、通学途中で被災した場合の行動は?
 ◇ 帰宅地図を家族と共に作成、本人に常時持たせていますか
 ◇ 災害直後、本人を帰宅させないか、あるいは家族や支援者に確認した上で帰宅させるタイミングをはかることになっていますか
 ◇ 災害時には本人には必ず声かけをし、本人に説明・確認することになっていますか
 ◇ 会社などにはペットボトル(飲料水)、チョコレートやキャラメルなどを常備していますか
□ 万一のときに親に代わる人を設定し、確認してありますか
  (成年後見制度の活用など)

災害発生!─その時何をするか
あの人は無事かな
□ 要援護者名簿と照らしあわせましたか
□ 家の中にひとりで取り残されている人はいませんか
ひとりでいる自閉症の人は大丈夫だろうか
□ 電車やバスに残されていませんか
□ 健康状態の確認は?
□ 連絡先の確認は?
□ 家や学校、所属先に安否を連絡
ケガなど被害の状況を確かめよう
□ ケガをしていませんか
□ ガラスでの切り傷や、打撲はありませんか
□ 「おくすり手帳」を確認しましたか
どこに誘導したらいいでしょう?
□ 先ずは最寄りの避難所へ
□ 専門スタッフ(腕章などの目印)に相談
□ 福祉避難所が分かれば、そこへ誘導
避難先で支援すること
□ 被災障害者相談センターの設置
□ 自閉症支援専門スタッフの配置
□ 避難状況の確認(在宅や車中泊など)
□ 食事や毛布などの配給リストに漏れはありませんか
□ 車中泊エコノミー症候群など、健康上の注意
□ トイレは?(洋式、簡易式トイレ、洋式便座の用意)
□ パーティション(間仕切り)の用意
□ 入浴の付き添い
□ 個別の対応をしていますか
□ 本人、親へのメンタル面での支援、心のケアは

● 避難先で困ったときには ⇒ P14〜P19を参照